1年の99%は、(大安町)両ヶ池公園はよくある普通の家族向けの公園である。しかし毎年5月の特別な日曜にそこへ行けば、藤原山の陰でレースに臨むサラブレッドや猛々しいトレーナー、シルクに身を包んだ騎手たちを見る事ができる。
これは格式張ったことも飾り気もない純粋なレースで、素手の競争だ。気の利いた競馬場設備?そんなものは必要ない!スタートゲートやロープなんてなくてもいい。スタートラインは砂の上に係員のブーツで引かれた線だ。400mの狭いトラックは幅10mもない。外側に走るレーンがないので、観客は馬が来たら砂を浴びるほど近くでレースを観戦することができる。
長い昼休憩の間、子供たちが競馬場へ遊びに出ていったとき、私も厩舎を探検しにいった。他にも同じ事を考えた観客たちがたくさんいた。厩舎をほぼ覗き終えたころ、絞り出すような「こんにちは」という声に顔を上げると、地元の調教師広田武則と目があった。
小柄で、肌は何十年も太陽にさらされて革のように日焼けし、癌で喉頭を失った広田は、世界中のどの競馬場にいてもふさわしいように見えた。彼は自分が生まれ育った土地に似合う人なつこい田舎の競走馬の調教師の典型だった。
一瞬の間に、私は広田と何頭かの馬と共にビール片手に写真を撮った。それから広田がトレーニングチームと開いたバーベキューパーティーに参加した。
すべての騎手、トレーナー、厩舎のスタッフ、その他大勢の人たちが集まって、広田の滑稽な振る舞いに笑ったが、広田はからかいなど気に留めない様子だった。2時間後、広田の馬がメインレースを終えたあと、彼は別人のようだった。
そこにはもうおどけた男の姿はなかった。広田は静かに優勝後にトラックを一周する馬の手綱を引いていた。馬をクールダウンさせる間、彼は事務所で一人成功した一日に満足していた。明日はこの誇りを持った調教師にとって、また普段の仕事の一日になるのだろう。


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